昭和20年の日本人男性の平均寿命は、23.9歳だったそうです。
今日の平均寿命からすれば驚きの数字です。
もちろん、平均寿命ですから、15歳で死ぬ人も、
50歳以上まで長生きする人もあるわけです。
前日まで何ともなかったのに、突然歩けなくなるなんて・・・
阪神大震災と、サリン事件で騒がれていた平成7年の11月。
ある朝、朝食を終えた父が、食器を片付けようとしたところ、
突然、立ち上がることができなくなってしまいました。
右足に血液を送る血管が詰まってしまったのです。
家族でいちばん健康で、大病を患うことはなかろうと言っていたのに、
まさか、突然右足の自由が利かなくなるとは。
父の入院先の病院を出て見えた夕暮れは、不安の色に染まっていた、
その光景は、今も脳裏に焼き付いています。
いくら恵まれているとはいっても、いつまでも、それらは続かないのだ。
やがて父の病気は回復しましたが、私は受験を来年に控え、落ち着かない日々を
送っていました。
冬のある日、父の旧友が家に来ており、夕食をともにしていた時、酒に酔ったそ
の友人が、将来何をやりたいのかと、と尋ねてきたことがありました。
「とりあえず大学に行って、4年間で考えることにしている」と答えた私に、
その人は、酔っ払った真っ赤な顔で、
「おまえ、そんなこと言って両親を心配させちゃいけない。
早くやりたいことを決めて、それから大学行くんだ」
と、語勢荒く言ったのです。
私は、かねてからの疑問が、心の中で、いよいよ膨れ上がるのを感じました。
一度きりの人生、生きて何をやったら、本当に後悔しない人生になるのか?
生きていく時に、一番大切なことは何か?
こんな重大な問いを、とりあえず決めてしまえと言うが、そんな簡単に答えが出
るものか?
「生きている時に、これ一つ果たさねばならないことがある。」
すべての人は、尊い使命を持って生まれたきたのだよと、
教えられたのがお釈迦様だと、幸いにして知ることができたのは、そのしばらく
後でした。
学生時代は、一生の中でもかなり恵まれた時代。
そして、どれだけでも、その後の人生を自由に舵取りできる時代といえましょう。
そんな人が、もし、冒頭に挙げた事実を知ったらどうか。
仮に、今私が20歳であったとして、23.9歳で死ぬとしたら。
今、これからやろうとしていることを、私は今日やるだろうか。
今日、これから会おうとしている人に、私は今日会うだろうか。
いずれ必ず我が身に起きる、確実な未来を見つめることは、
いたずらに暗く沈むことではなく、
生きている、一瞬一瞬を本当に明るくする第一歩である。(釈迦)